2022/12/14

2022年11月20日(日)第357回グローバル・セッション・レポート

開催後のレポート
グローバルセッションイメージ

開催日:2022年11月20日(日)10:30~12:20
場所:ガレリア3階 会議室
ゲストスピーカー:サムエル・ジードさん(亀岡市国際交流員・カナダ出身)
コーディネーター:藤田宗次さん
参加者:11名

今回のタイトル:相手の視点から自分のことを思う

自己紹介

藤田さん(C):今日のゲストのサムエルさんです。サムさんと活発に話し合いをしてください。3年半前に亀岡に来られ、日本語は堪能です。でも、英語で話したい人は英語でどうぞ。まず、自己紹介からお願いします。

E・Tさん:京都出身で、島津に勤めています。島津での仕事には、外国人労働者もいて、いっしょに働くことも増えています。フィリピン出身の人が多いので、サムさんのカナダということがどのようにちがうかも知りたいです。

H・Kさん:大津市から来ています。ツアーガイドをしていますが、この10月からようやく解禁になり、海外の人たちが入国してきました。10月は、50万人くらいの入国があったと聞いていますが、11月の今週などは、電車も満員で乗れないくらいの人出があります。今はヨーロッパ系の人が多いですね。春や夏にツアーガイド付きで申し込んでいた人たちが今になって来ているようです。フランス・スペインからが多い様で、年末まで続くでしょう。東京に住んでいる外国人が、京都へ来たいという話も聞きます。今は、醍醐寺や二尊院がおすすめですが。東福寺は夜も入れるようになったと思います。

S・Yさん:今は亀岡に住んでいます。実家は能勢町です。2年前までは、カナダのトロントに家族で住んでいました。夫は、カナダ国籍を持っていますが、アルメニア出身です。日本語教室をやっていて、亀岡は、外国人にとっても、京都が近いので、いいかなと思っていたら、多文化共生センターの相談員を依頼され、今はそれもしています。

N・Y君:9才です。(S・Yさんのお子さん)

S・Nさん: 外国人に対する支援活動をしていて、出前でマンツーマンで支援もしています。京都市にいます。

S・O君:立命館大学国際関係学科の1年です。立命館宇治高校の1年生の時にカナダへ留学しました。その直前にサムさんにお会いし、カナダの話をお聞きしました。あれから、3年半くらいたったのですね。留学先は、オタワから南へ1時間ほどの町でした。また、つながる話があるだろうと参加しました。

H・Mさん:日本語教師をしています。ベトナムで教えたこともあります。

Z・Yさん:中国出身で17年前に日本に来ました。夫は日本人です。この間、フィリピンで日本語を教えていたこともあります。2016年にそこで、看護士資格を持って居る人たちが日本で介護士となるために日本語を勉強していたのです。今はその教え子が10数人来ています。今は民際日本語学校で、中国人学生の生活指導などもしています。また、亀岡市の支援員として、千代川小と亀岡小に毎日行っています。

児嶋:今回は、Global Sessionを1999年に亀岡市交流活動センターで開始して357回目になります。大体毎月ゲストを招いてやっていたと思います。20年も過ぎたと思うと、ちょっと怖い感じです。

このGSの約束ごとは2つあり、一つは、「コーディネーターからも当てない」と、「どこからでもセッションの中に入り込んでいい」ということです。よろしくお願いします。

藤田さん:1999年の開始から少ししてから、私もずっと参加しています。楽しいセッションですね。住まいは亀岡で、30年ほど住んでいます。

児嶋:藤田さんは、太秦映画村で仕事をずっとされていて、今も、「子どもが映画を作る会」を主宰されています。

藤田さん:市長さんにお会いしたときも興味を持たれて、それに関する資料を送ってほしいと言われましたが、まだしていません。このGSは、国際的な人がおおいですね。では、サムさん、思ったことを何でもお話しくださいね。

グローバルセッション開始

サムさん:はじめまして。サムエル・ジードと申します。3年半前に国際交流員として亀岡に来ました。

 今日は、ちょっと重い話になるかもしれませんが。ご自分がちがう意見があれば、いつでも、聞いてくださいね。

 私は、カナダのオンタリオ州のトロント市の出身です。父は、イギリス出身で、母は、カナダです。ユダヤ人です。キリスト教徒とはちがう習慣もあります。小学生の時にはあまり気づかなかったのですが、中学生になると、「あなたは、ユダヤ人ですね。」と言われ、「何がちがうのか?」と考え始めました。高校生になると、「あなたはユダヤ人」と言われることがあると、何が問題なのかと思うようになりました。日本人から見ると、何がユダヤ人の問題でそうでないのかは全然わからないと思いますが。

S・Yさん:ユダヤ教を信じているから、ユダヤ人なのですか?

サムさん:実は、ユダヤ人になるのは、大変なのです。母がユダヤ人だと、子どももユダヤ人になります。でも、父親がユダヤ人でも子どもは、ユダヤ人になるとは限らないのです。両親がユダヤ人だと、子どもはユダヤ人になります。

 日本に来ていると、「何人」かは、意識していなくて、「生きている」という実感はあります。

 カナダは、本当に多文化社会なので、見た目はもちろん、バラバラで、見た目だけに限らず、誰が移民なのかもわからないのです。この点は、日本と大きくちがいますね。

 「カナダ人になりたい」と思ったら、どうしたらいいのかですが、「カナダの国籍を取る。」ことでいいのですが、カナダ生まれの自分から見ると、それでいいのかと思ったりして、ちょっとくやしい感じもします。

藤田さん:カナダへの移民は、今はアジア人が多いのですか?

サムさん:トロントやバンクーバーは、そうですね。

H・Kさん:オーストラリアよりカナダの方が移民として、入りやすいようです。

サムさん:今はインド人が増えています。カナダの人口は少なくて、3800万から3900万人くらいです。カナダの都市に住みたいという希望が多いですね。

S・Yさん:トロントやバンクーバー以外では、現地の人と移民の人の英語がちがい、わかってもらえないので、都市に住みたいと思うようです。

サムさん:カナダに移住して20年たっても英語を話せない人もいます。コミュニティがあるとその中にいれば、生活ができるからです。でも、日本ではそれは、難しいですね。日本語がわからないとなかなか暮らしていくことは難しいと思います。

 6年前に、11ヶ月間、日本に留学していたときに、日本のことを日本人の立場から知りたいと思い、文化人類学の視点から理解できないかと思っていました。その時に、日本語能力を付けないと難しいと思いました。それで、カナダに帰り、ちゃんと勉強しないと身に付かないと感じたので、独学で日本語を学び続けました。3年半前に国際交流員として再び日本に来て、現在は、そのころと比べて別人のようと思います。自己中毒かもしれませんが、泣くような気持ちでしっかり学んだと思います。

 以前の国際交流員でマーガレットさんという人がいますが、現在はイギリスの日本ツーリズムの相談員をされていますが、その人のようになりたいなと思っています。

児嶋:1989年ころだと思いますが、当時私はブラジルから帰国し、教育委員会の非常勤の指導主事を頼まれて仕事をしていました。その時に、当時の文部省で、ALT(英語指導助手)を中学校に入れ、生徒の英語力を上げるという試みをするので、説明会があるので行ってきてと言われ、行きました。その次年度から全国でALT制度が始まり、亀岡はその1年目から取り入れていました。その数年後、CIR(国際交流員)も取り入れられ、現在に至っています。

 サムさんは、そのマーガレットさんと同じくらい頑張っていると思いますよ。

サムさん:前任者は、ミシェルさんという人でしたが、その人の日本語力もすごかったです。当時自分は、日本語をある程度できると思っていたのですが、今に比べると、ぜんぜんだめでした。鏡を見ると、白人で、今も日本ではめずらしいですね。そのため、どこへ行っても、覚えられます。

 では、自分では亀岡で何ができるのか?と考えました。それで、自分で亀岡のCaféや食事を出すお店の80%くらい訪ねました。

S・Yさん:十分国際的なことをしていますよ。

サムさん:仕事を始めて半年で、コロナ禍のため、帰国できなくなりました。それならばと、亀岡にいることを充実させようと考え、「ひと」として話そうと考えいろいろな人たちと声をかけ話をしてきました。でも、新しいところへ行くと、観光客とみられたり、日本語ができないだろうと英語で声をかけられることもたくさんありました。でも、「見た目がちがってもこれでいい」と思うようになりました。人の考え方を変えさせることはできないが、相手が、自分で「変えたい」と思ったらひとは「変わる」と思います。

藤田さん:「京都人」は、保守的ですね。京都人は、あまり打ち明けないですが、いったん変わるとこころを開いてくると思います。いったん打ち解けると相当かわります。でも、日本人にとってもそうなので、外国人にとっては、大変だろうと思います。外国人を見ると、外国語が話せないと思う人は、外国人が来ると引っ込んでしまうでしょう。

 映画村でも労働者が不足していたときに、フィリピン人3人が仕事に来ていたことがありますが、彼らは時間が来たら引き揚げてしまうのです。このようなこともありましたが、日本人も慣れてくるとこころを開いてきますね。

S・Yさん:日本人は、日本で長く日本人としてだけいたので、「言わんでもいいやろ」などと思うのでしょう。カナダでは、違う文化のひとばかりなので、「伝えないと伝わらないので、話す」ことが重要だと思えてきます。

藤田さん:わかっているだろうと判断しても、「あれ、通じてない」とわかると、話をする必要がありますね。

サムさん:自分のことは隠す必要はないですね。自国の他に住むと、伝えないと誰も助けてくれないということを知るのですが。

S・Yさん:日本では「聞く」ことが大切と思われているようですが、カナダでは、「自分の思いを持って来て話してほしい。そうでないとわからないから」という考え方のようです。このGSのように能動的な話合いは少なくて、先生の話を「聞く」ことが多いようですね。

サムさん:カナダの文化の紹介で、学校へ行くこともありますが、急にクイズをやったりして、聞くだけでなく参加してもらう形を取ることもあります。

S・O君:いろんな国の人たちといっしょに話をすると、欧米の人たちはテンションが上がると何でも話すのですが、日本人は少し遠慮して遅れる印象があります。どこでちがいがあるのか、見て行きたいと思います。

藤田さん:通常、日本ではdebating(討議する)をあまりやってきませんでしたね。昔の人はそれを拒否することもあったと思います。

サムさん:カナダでは、社会的に正しい・正しくないという意見がしっかりあって、異なった意見を言うと、悪いという人もいます。

児嶋:先ほど、外国人の顔をしていると取り扱われ方がちがうという話がありましたが、ブラジルにいたころの話を思い出しました。子どもたちを学校が終わったら、迎えに行って帰らせるのが普通の体制でした。その日もふたりの子ども(小学生と中学生の女子)を歩いて迎えに行って帰り道で、若い青年が真向かいから歩いてきて、「セニョーラ、クイダード」と大きな聞こえる声で言ったのです。「おくさん、あぶないですよ。気をつけて」というポルトガル語です。私はびっくりして、その後ろを見たら、ギャング少年団みたいなグループがぐいぐいやって来るのです。「これはあぶない」と思って子どもといっしょに、車の通っている車道をあわてて横切り、向こう側の舗道に走りました。その後で、ふり返るとギャングのような軍団が、さっきいた道にせまっていました。あの男の子が知らせてくれたから助かったと胸をなで下ろしました。このように、顔がちがっても、言葉が分かりさえすれば、助けてくれることもあると実感しました。そのことを今思い出しました。

サムさん:みなさんは、日本にいる外国人に何語で話しかけますか?

S・O君:英語で話しかけようかなと思うかもしれません。でも、自分のレベルで通じるかなと思うと日本語で話かけるかも。

サムさん:なぜ英語で?

S・O君:カナダにいたとき、僕に英語で話しかけられて、その人の英語の方が正確だなと思ったことがあります。

S・Yさん:夫はカナダにいますが、アルメニア人で最初、ドイツ語で話しかけられたようです。外国人というのは、ドイツ人だと思い込んでいる人もいて。

S・Nさん:最近、「かんたんなにほんご」をやっていて、「日本語を話せますか?」と聞いて日本語で話すと思います。通じなかったらどうしようかと思いますが。外国人だから英語ができるというのは、思い込みだと思います。

Z・Yさん:このあいだの民際日本語学校のスピーチコンテストで、「私の日本語は英語っぽいですか?」というタイトルで話した学生がいました。彼女は、「どこにいても、日本語で話しても、日本人は英語で返して来るのです」と。それで、「日本語で話してください。私の日本語は英語っぽいですか?」と聞いたと。私は、外国人にも日本語で話しかけた方がいいと思います。

サムさん:日本にいる時には、日本語で話しかけ、カナダにいるときには英語で話しかけたらいいのでは?

Z・Yさん:中国人の友人で観光で来ても、日本語で話してくれるとうれしいと言っています。

藤田さん:話が通じるとうれしいですね。

H・Kさん:外国にいて観光客に道を聞かれることもあります。フランスではフランス語で聞かれます。日本では、この人は日本語を話すかなと分からないときには、May I help you? と聞くこともあります。少し、自分が知っていることばをいうと、会話に入りやすいと思います。

 スイス人は、4カ国語を話せる人もいます。外国にいて、日本語で話かける人はすくないですね。

サムさん:留学生の時に、話せなくてくやしかったので、ちゃんと勉強しようと思いました。

藤田さん:日本でも津軽海峡のある青森のことばだけで話していると、何を言っているのかわからないです。こちらの言うことは通じるのですが、向こうの言うことはわからないのです。

サムさん:ユダヤ人の社会でも、日本のように成人式があります。男性は13才で、女性は12才です。その時に成人になる人が、ヘブライ語で唱えるのですが、それができなければ、大人になれないと言われています。また、家族の知り合いが参加し、ユダヤ人としての哲学や倫理について学びます。

H・Kさん:トランプ元大統領の娘のイバンカさんは、ユダヤ人と結婚し、ユダヤ教に改宗したと聞いています。試験や儀式もあるのですね。

藤田さん:クリスチャンは、洗礼を受けたらクリスチャンになるのですか?

サムさん:私は、ユダヤ教のヘブライ語の文字を見て音は出せるけれど、中身はわかりません。あいさつしかわかりません。

H・Kさん:学校でヘブライ語は学ばないのですか?

サムさん:そういう学校行っていないですね。トロントにはユダヤ教の教会もあります。聖書や食事の内容も大切です。

藤田さん:十戒のようなのもあるのですか?

サムさん:旧約聖書に書いてあります。もともと旧約聖書からはじまり、新約聖書やイスラム教も派生したのです。ルーツは同じです。イエスはユダヤ人だったのが、亡くなってからキリスト教はできたのです。

H・Kさん:イスラエルのエルサレムには嘆きの壁があります。

藤田さん:日本人は、どこにでもお参りしますね。大木や巨岩にも。

サムさん:日本の宗教とはかなりちがいますね。宗教行事が、文化行事になっています。神社に参ったり、お寺で葬式をしたり。

藤田さん:日本には、仏壇もあるし、神棚もあるし。教会のように、毎週行ってみんなで考えたりするわけでもなく。

サムさん:カナダでは、宗教の中に生活があり、日本は生活の中に宗教があるのですね。

S・Yさん:仏教を信じているわけでもないのに、仏教文化としての行事はやりますね。

H・Mさん:欧米の人に聞かれたことがあります。仏教に関わりがなくても、葬式だけは仏教形式にしたり、結婚式はチャペルでしたり、天皇家は神道だし、どうしてと。自分の家も仏教ですが、何宗(曹洞宗など)か知らないです。

S・Yさん:外国の人に聞かれたことがありますが、「寺と神社のちがいは」とか。

S・Nさん:質問されることも多いですが、同じ事を何度も聞かれることもあります。どうしたら、おだやかに続けられるかなんて思います。

サムさん:質問に答えるだけでなく、自分の思いや考えも話したらいいと思います。

S・Nさん:興味のない人をこちらに向かせるのはどうしたらいいのかなどと考えますね。

児嶋:あきらめないことです。ひとつでわからなければ、ちがう言い方でアプローチするとか。

サムさん:いろいろやってみたらいいですね。

 今後は、とりあえず、仕事をしながら日本で家庭を持ち、父親となり、子育てもしていきたいと思っています。日本の社会で、何かの支えとなっていけたらと考えています。

E・Tさん:今日のような話を日本人ともしてみたいと思います。

藤田さん:M・Sさんは今、オーストリアのグラーツという町に行っていますね。外国語を学ぶ困難さは知っていましたが、ここに留学している日本人のSさんは、イギリス、ベラルーシ、ロシア、ドイツに留学し、今はオーストリアにいます。そして、「ロシア語を学んでいたので、ドイツ語は簡単だった」と言っているとか。いろいろな人に会ったそうです。

サムさん:言語をたくさん学ぶだけで、人が変われるわけではないですからね。

E・Tさん:わたしは、まだ外国に行ったことがないのですが、ここでいろいろな人に会えました。

藤田さん:そろそろ時間が来ました。また、話したければサムさんに連絡をとってどうぞ。