「共に生きる」ために 2021年11月28日京都新聞掲載

コンテント

遠くにいても話し合いができる環境が整ってきていると感じる機会が増えていたのがコロナ禍のひとつの成果でしょうか?

2014年に外国につながる子どもさんとお父さんやお母さんの学習支援のひまわり教室を開設し、2021年現在も、細く長く続けています。

同時に、指導者が学び会う研修会も毎年京都府国際センターや亀岡市の国際交流協会の共催でやっています。

今回は、「国際教室」を小学校で340校の内147校(43%)と中学校で39校/145校(27%)も市で設置をされている横浜市から講師をお招きしました。

指導の形態は児童生徒のそれぞれの実態に合わせ、「取り出し指導」や「入り込み指導」などさまざまです。

ここで「そのような多くの先生を、どのようにして見つけ、配置するのか」という点です。

その答えは「横浜周辺の教職課程を持つ大学では、通常クラスの教員養成と国際教室の指導ができる内容に変化している」でした。

亀岡市でもひとりひとりの児童生徒等に合せ取り出し指導や母語での通訳ができる指導者を探すために想像を超える苦労をされていることを知っています。

10年ほど前には、「こどもは外国語を身につけるのは早い」という認識で担任の先生任せがほとんどであったかと思います。

近年は、生活言語と学習言語の身に付け方は大きく違い、学習に必要な言語力は5年から7年かかるという研究が進み、サポートがあれば理解ができるが、なければぼんやり過ごす日々が続くと言われています。

 ひまわり教室での学校外でのサポートもコロナ禍の中、細々と、「宿題をいっしょにしようね」と声をかけ、3年生で九九の覚えが悪いと気がつくと、学年を戻りその部分の復習をするようなこともあります。

コロナ禍で会えない時には携帯メールで答えることもありました。

それぞれの学校でも、授業中や下校時間後の指導も必要な時もあり、わからないまま過ごす時間はなるべくなくしようという全体にあると思います。

日本に在住の外国につながる子ども達だけで無く、自分たちが外国に住む場合の困難さに思いを掛けることができるか否かを問われていると思います。

「共に生きる」とはどこに居ても、誰にでも同じような感覚が求められるはずです。

横浜の市全体の取り組み方は特別のことをしているというような感じを持たせない普通さがありました。

亀岡のひまわり教室でも他の国から来られた方をインタビューし、たなかひろこさんという絵本作家が指導者メンバーにおられ、文化のちがいに注目する絵本の制作を始めました。

メンバーのひとりのホームページの「たげんごオリジナルえほん」をクリックすれば、中国語と日本語の絵本や、スペイン語と日本語、アラビア語と日本語の絵本がYouTube配信で飛び出して来ます。

言語のちがいだけでなく、「反抗期」など考えたこともなかったという中国のお話しなど、さまざまです。

どうぞ、お楽しみください。

オフィス・コン・ジュント代表 児嶋きよみ

2021年度のひまわり教室について

コンテント

2014年に2人の外国出身のお母さんから子どもの「勉強を見てほしい」と言われたのが、ひまわり教室が始まるきっかけでした。

コロナ禍で制限もありまますが、2021年度も引き続きひまわり教室を開催していきます。

2021年度の教室の内容と特徴

1.多言語での読み聞かせ(保護者の母語に子ども達が関心を持つように)(馬路教室)
 *中国語・英語(フィリピン出身の母親)・スペイン語(メキシコ出身)と日本語で読む。

2.外国につながる子どもの日本語での読み聞かせ
 *かみしばいや教科書を、子どもの希望でみんなの前で読む

3.絵本の製作(中矢田教室) 電子絵本にしてだれでも読めるようにする予定

①中国出身の母親の子どもの時の話を取り上げ絵本作家(支援者)が絵を描き中国語と日本語で作成

『ヤンヤンちゃんとおにいちゃん』 (日本学術振興会科学研究費助成事業より)
 発行人:滑川恵理子・絵 田中ひろこ・協力者 児嶋きよみ

②『反抗期』を主題に・シリア・メキシコ・中国・フィリピン等で作成

③『おばあちゃんはおこりんぼ 』メキシコ出身の母親の子ども時代の話から絵本作成

④シリア出身のお父さんが日本の大学へ入学するまでの話

4.Global Sessionのゲストの中で多言語での言語習得の話をセッション形式でする。

5.教育機関とのつながりを持ち共によりよい環境作り
*小学校校長会・中学校校長会で説明
*学校訪問:

6.毎回のひまわり教室の開催後、指導者がレポートを書き、編集して次回までに再送付する。指導内容と子ども達の理解状況共有して、次回にのぞむ。

ひまわり教室から皆様へ

コンテント

子どもは言葉の天才だと言われています。特に外国語の習得は大人より驚くほど早いという話は1度ぐらいお聞きになったことがあるではないでしょうか。でも、実は子どもにとっては、外国で<その国の言葉で生活することと<その国の言葉で勉強することは全く違うことなのです。なぜなら、使われる言語能力が違うからです。

バイリンガルの子どもの言語能力は、「生活言語能力」(BICS*)と「学習言語能力」(CALP**)を区別して考える必要があります(Cummins, 1981)。

「生活言語能力」は、日常生活でのやりとりに使う言語能力です。たとえば、学校の休み時間に友だちと話したり(例:「何して遊ぶ? / サッカーしよう!」)、家庭での親子のやりとり(例:「今日の夕飯は何?」「宿題やったの?」)で使うことばの力です。このような言語能力は大体1〜2年で習得できます。「子どもは外国語の習得が早い!」「すぐにぺらぺらと話すようになる!」というよく聞く話はこちらの生活言語能力を指しています。

一方、「学習言語能力」は、抽象的な概念の理解や、教科学習に必要な言語能力です。たとえば、教科学習で扱う概念(例:「環境汚染」「電流」)について先生の説明や教科書の内容を理解したり、自分で発言したりするときに必要なことばの力です。例えば、中学校の国語の教科書には『月の起源を探る』という文章があります。その中に「惑星、衛星、公転、自転」という言葉が出てきます。大人なら太陽、地球、月の関係性を思い出せば、これらの言葉が簡単に習得できますが、子どもの場合、まず太陽、地球、月の関係性について説明するところから始めなくてはなりません。そのため「学習言語能力」の習得には5〜7年という長い時間がかかります。

二つの言語能力は別々のものですから、「生活言語能力」が身についたら、自然と「学習言語能力」が身につくというものではありません。学校の勉強についていくために必要な言語能力の習得は決して簡単なことではなく、学習の積み重ねが必要です。

オフィス・コン・ジュント 代表 児嶋 きよみ