2020/04/15
2018年7月21日(土)第311回グローバル・セッション・レポート ゲストスピーカー:崎ミチさん
開催後のレポート開催日:2018年7月21日(土)10:30~12:00
場所:ガレリア3階会議室
ゲストスピーカー:崎ミチさん(同志社女子大教員)
コーディネーター:佐治佳代さん
参加者:6名
今回のタイトル:京都に住む国際児の課題と研究
自己紹介
佐治佳代さん:アニーと呼んでください。京都市西京区に住んでいます。子どもたちに英語を教えています。インタナショナルスクール(幼稚園~高校)を作るのが夢です。
Nさん:GSは2回目の参加です。京都市左京区に住んでいます。関東から京都に来て4年目です。2年前に講座で清田淳子先生のあとをひきついで外国につながる子どもに関する講師をして以来、亀岡に何度も来ています。
Yさん:亀岡に住んでいて南丹市の学校の教員をしています。GSは初めての参加です。外国につながる子どもと保護者の学習支援教室のひまわり教室で指導をしています。
Tさん:宇治市に住んでいて、自衛隊員です。家は京都市右京区の京北町です。GSは何度も参加しています。学園大学の卒業生で、今もOB会などで何度も亀岡に来ています。
児嶋きよみ:今回はGlobal Sessionの311回目です。
崎ミチさん:カナダ出身の日系4代目になります。日本に来て22年目です。
Global Sessionのゲストとしては、2回目です。同志社女子大学の今出川キャンパスで、英語の教員としてIntercultural Communicationという講座を持っています。
現在は、大阪大学の大学院博士課程の2年目に在籍し、研究を続けています。今日のタイトルは、自分の現在の研究分野に関することなので、みなさまのご意見をお聞きしたいと思っています。
夫は日本人で、島根県隠岐の島の出身で、娘(小3)がひとりいて、京都インタナショナルスクールに通学しています。
崎ミチさんの研究課題
研究対象の子どもは小学生(5才~12才)である。次の3条件をあげる。
- 母語がちがう(外国生まれ)
- 日本で産まれたが両親が外国人、または、片方が外国人である。
- 公立の学校に通学している
*日本語で授業を受けている
*場所:京都府内
*外国籍児童(2年前の調査によれば、府内の小学校児童数128594名の内外国籍児童数は767名)しかし、日本国籍を持つ外国につながる児童生徒の数は、この数字に反映されていないことは疑問。
*成績にむすびつかない児童の内訳
a.学業に興味がうすい(理解がゆっくり)
b.怠けている
理由:理解ができなくても無視されている。孤独で友達がいない、文句を言われるなどさまざまな理由が考えられる。日本の移民政策指標は2015年の調査では、38ヶ国中27位である。
参考資料
移民総合政策指標(2015)
多文化共生の新時代 明治大学国際日本学部教授 山脇啓造
「4回目の調査結果(MIPEX 2015)が公表されました。第3回目の参加国にアイスランド、トルコ、オーストラリア、ニュージーランド、韓国そして日本が加わり、38か国となりました。具体的には、8つの政策分野(労働市場、家族呼び寄せ、教育、保健、政治参加、長期滞在、国籍取得、反差別)について、167の政策指標を設け、数値化しています。その結果、総合的な評価では、スウェーデンが1位(78点)となり、ポルトガルが2位(75点)、ニュージーランドが3位(70点)となりました。4位以下10位まで、フィンランド、ノルウェー、カナダ、ベルギー、オーストラリア、アメリカ、ドイツとなっています。ちなみに、日本はスロベニア、ギリシャと並んで27位(44点)です(最下位はトルコで25点)。(中略)
今回の日本の調査結果を政策分野別に見てみると、比較的評価の高いのが労働市場(65点、15位)、家族呼び寄せ(61点、20位)、保健(51点、16位)の3分野で、残る5分野は、教育(21点、29位)、政治参加(31点、23位)、長期滞在(59点、20位)、国籍取得(37点、23位)、反差別(22点、37位)となっています。近年、ヘイトスピーチ問題が日本でも大きく取り上げられていますが、反差別政策の評価が特に低いことが注目に値します。」
38カ国の「教育対策」の項目を比べ、移民児童生と「教育」に関する統合政策に関する「最悪のケース」のまとめ(移民総合政策指2015参照)(崎)
1. 移民の子どもに関心を教師が持たない。
2. 他の子どもと同様に扱う(特別な手当をしない)
3. 限界を決めない(ここまで以上のケースは特別に手当するなどの限界)
4. 母語に関心がない(以前は、学校でも、日本にいるのだから、外国語である母語を使わずに日本語を使うようにと言っていた)
5. 教員は今まで外国と接することがなく、不安や困った事への想像ができない
最悪のケースが起こる理由について
1. 日本の学校や社会が一斉共同体主義である
2. 出身国の文化や背景を知らない・想像できない
3. 子どもの文化のアイデンティに関心がない
4. 家庭の事情がわかりにくい・理解されないことに不満を持つ
5. 京都府内では、コミュニティがなく、散在している
6. 支援するにも資金が不足している。そのため草の根の支援に頼らざるを得ないが、その草の根団体の多くも資金不足である。
以上の事情をふまえて、自分の研究テーマは以下の3点である。
1. 京都府内の公立学校に通学する外国につながる子ども(国際児)を対象とする。
2. どのような支援が必要か
3. 京都府内の現在の学習支援の内情
方法:
1.インタビュー調査
2.フィールドワーク
以前のリサーチ例:
1. 公立学校にリサーチした。
2. 学校での支援の内容はだれが、どこで決定するのか
3. 草の根団体の場合:支援の内容(ボランティアか・場所は・言語は・子どもの数等)
4.コミュニティがあれば、どのような支援をしているかをリサーチする
結果:学校と両親と両方に、何が必要なのかを問いかける必要がある。ただし、限界がある(needとsupply)。
日本の学校の先生はとても忙しく、子どものニーズにどう対応したらいいのかと悩んでいる。外国籍の子どもも日本籍がある外国につながりがある子どもも日本語の理解度が低い子どもはたくさんいる。
それぞれに学習支援が必要であるが、だれが、なぜやらなければならないかを、政府で検討し、どうするかを早急に検討する必要がある。
今までのように草の根活動に任せておくだけでは対応できない状況になっていく。
グローバル・セッション開始
児嶋:最初に1996年に日本に来たと言われていましたが、そのままずっと日本にいたわけですか?
崎:大学3回生の時に留学し、1年間いて、カナダに帰国しました。もっと日本を勉強したいと再度来日し、大学院も経て研究者になり、日本人と結婚し京都インタナショナルスクールに通う小学3年生の女の子がいます。最初は、日本の保育園に入れ、日本の公立の学校に行かせようと思っていましたが、インタナショナルスクールにも週2日行かせ、様子を見ていました。その後、小学校1年生は公立の小学校へ入れたのですが、やはりこの子にはインタナショナルの方が良いと思い、2年生で転校しました。研究の対象の子どもとしては、私はもともとフィリピンルーツの子どもを見ていました。でも、京都では、ネパール、インド、ベトナムなどが増加して来ています。
佐治(C):パラグラフ2を読んでください。内容は、どのような支援がされているか、支援は足りているのか、どのような支援を増やす必要があるのか、また、モデルとなる教室ではできて、他では何故、できないのかなどを問いかけていますね。私は、日本では、「ダイバーシティ」とか、「多文化共生」という考え方が遅れていると思います。このように求められているのだということを、広報していく必要があると思います。このような活動も保護者から求められているのかも検討して行く必要があるでしょう。また、保護者の所得も低いと子どもに関心がむけにくい環境があるのでしょう。子どもが将来何になりたいのか、親にもボトムアップして、何のために支援をやっているのか、問い続けていかなければならないと思います。先生にも。
Y:高校受験が控えて初めて勉強しなければ大変だと気がつくケースが今までにもありましたね。
佐治:そうなってから来るのですよね。幼稚園の子ども時代から、声をかける必要がありますね。真っ白なところに、勉強の楽しさを。
T:親などが情報収集しなければ、子どもだけでは難しいでしょう。
佐治:賛成ですね。
崎:親にも知らせることも必要ですね。
佐治:京都市か知らないのですが、京都人は伝統を守ることに一生懸命で新しい物を取り入れるから伝統も守れると思いますが。多言語ができる先生を用意するだけでなく、いろいろな背景を持つ子どもが増えると、今までの子どもたちも変わると思います。
児嶋:京都インタナショナルスクールにはいろいろな国の子どもたちがいるのですか?
崎:インタナショナルバカロレアを採用しているので、授業は英語で行われます。でも30ヶ国以上の子どもが来ていて、京都には、このような学校は1つだけです。関西フランス学院などもありますが、あれは、フランス政府が資金を出している学校で、授業料だけでやっているインタナショナルスクールは他にはありません。
佐治:授業料だけでやっている学校は、多分授業料も高いですね。貧乏でも行けるインタナショナルスクールを作りたいと考えています。お金がないから、塾にも行けない、行かない子どもたちがいますね。
崎:多くの親の考えは、「自分の子どもは日本語が話せるから、学習教室へ行かなくてもいい」とよく聞きますね。
佐治:外国人がいっぱいいる京都だからこそ、インタナショナルスクールが必要ですね。
T:インタナショナルスクールというと芸能人の子どもが行っているというイメージもありましたが。
崎:京都インターにも芸能人の子どもさんもいます。でも、多くは親の仕事で来ていて、3年くらいすると、帰国するケースが多いです。しかし、長期間在学する児童が増えて来ています。例えば、夫が日本人で母親が外国人で(逆なパターンもあり)、子どもは日本籍を持つ子どもも京都インターにはかなり増えてきました。
児嶋:このような子どもさんも多く公立に入っていますね。
N:崎さんの研究のテーマや課題を見ていくと、やはり崎さんの研究としての特長をつくり出す必要がありますね。中学校や高校ではなく、なぜ、小学校を対象にするのかなど。また、京都という立地条件を見て行かなければならないですね。まず、集住地域ではなく、点在していますね。これにもフォーカスするといいですね。どのような支援がされているかと、誰の立場として支援状況を見ていくかも大切でしょう。進んでいる外国との比較も大事で、多文化共生が進んでいる政策も見て行く方がいいでしょう。
崎:ドクター論文を仕上げることを目標にしているのですが、もっと、焦点を絞り、現実を取り上げる必要があると考えています。
N:京都は国際家庭が多いのですか?
崎:数字上は多いのですが。
Y:国際交流としてやっていても、南丹市は国際児までの支援はできていないと思います。核になる人がいないのも理由で、なかなか広がっていかないのです。農村部や山間部にも夫さんが高齢で奥さんが外国人で若い例がたくさんあります。車がないと町にもいけないような所に住んでいても、免許を取るにはそれなりの日本語力が必要ですしね。
児嶋:ひまわり教室に来て子どもは勉強している間に、お母さんが車の免許の勉強を指導者に見てもらいながら、取得したケースもありますよ。
崎:現在までもいろいろな研究や実践がありますが、いざ目の前にいると、「何をすればいいのか」と慌てて、絆創膏をはっていくくらいしかできないことが多いです。(対処療法のみ)
娘に京都インタナショナルスクールを選んだ理由をいくつか上げると、
1. 多様性がある(いろいろな国の、いろいろな世代の子どもも親も存在する)
2. 子ども達の持っている力の多様性を認めている。
例1:保育園に子どもが行っているときに子どもに絵を画かせた。
公立保育園:ちょっとちがった絵を画いたら、なぜと問われた。
京都インター:どの子の画もみんなちがう。
例2:先生との面談でも他の子とちがうことをしても問題にはされていない
もちろん、公立でも学校によってちがいはある。京都の白川小学校には国際ルームがあり、ムスリムの子がお祈りをする場も設置されている。給食で宗教のちがいで食べられない物に対する処置も考えられている(崎)。