2022/06/22
2022年6月11日(日)第352回グローバル・セッション・レポート
開催後のレポート開催日:2022年6月11日(日)10:30~12:45
場所:ガレリア2階大広間
ゲストスピーカー:村田英克さん(JT生命誌研究館スタッフ)
コーディネーター:藤田宗次さん
参加者:28名(大人20名 子ども8名)
今回のタイトル:映画「食草園が誘う昆虫と植物のかけひきの妙」を見てセッション
映画「食草園が誘う昆虫と植物のかけひきの妙」を見ました(73分)。 終わってから、感想と自己紹介をかねて、セッションをしました。
コーディネーターの藤田宗次さんの司会で始まりました。
自己紹介と感想
村田さん:JT生命誌研究館の村田です。映画の中では皆マスクをしていました。コロナ禍の時期の研究館の記録映画でもあります。研究館の基本は生命科学ですが、映画には能も出て来ましたね。「生きている」とはどういうことかを問う文化活動は科学だけじゃない。能楽には古来日本固有の自然や文化の中で「生きる」を考え続けた知恵がつまっている。そこから私たちが学ぶことがたくさんある。そう思って、GSでも、毎回、小鼓の実演をさせていただいております。映画にGSのシーンは出てきませんが、ここで皆さんと語り合ったことが、この映画を作る際の下支えになっていて、皆さんに感謝しています。
S・Tさん:茨木市にある立命館大学で心理学を専攻しています。下関出身で、この4月からひとりぐらしです。張穎先生に紹介してもらいました。
亀田さん:ヒロと呼んでください。大津市に住んでいます。村田さんの以前のGSもコーディネーターをしたことがあります。村田さんは、映画のディレクターとしてこの映画を作成されましたね。チョウチョが舞い上がる姿を見て感動しました。日本の古典との関係もうれしいです。
村田さん:映画は73分ですが、実を言うと、最後の5分間が、私が一番、皆さんに観ていただきたいと思っているところで、そこが、どうやったら観る人に一番響くだろうかという、その下拵え、試行錯誤の68分に、申し訳ないけれどもお付き合いいただきました。
亀田さん:以前のGSの最後の時に鼓を打っておられましたが、今回もその音で謡がこころに沁みました。以前のGSの参加者は意味がわかったかもね。
Y・Sさん:民際学校で日本語を学習しています。今日の映画もとてもおもしろかったです。
Z・Yさん:中国出身です。民際日本語学校の派遣日本語講師として、亀岡の亀岡小学校、千代川小学校に毎週来ています。夫は日本人で九州出身でした。中学校の修学旅行で京都に来て、それから京都に住みたいと思っていたようです。私の父は中国出身の日本人です。母は、中国人で、子どもの時、私は中国に住んでいました。中国人の母は、当時の日本の織物工場で仕事をしていました。当時はさなぎから繭を作り、それで生地を作り、織物を織っていたので、さなぎの煮物をよく食べました。そのことを映画を見ながら思い出していました。人間は、自然と生きるのだとこの映画を見て思い、感動しました。
R・Sさん:ひまわり教室の指導者をしています。映画にどんどん引き込まれました。質問がひとつあります。食草園が出てきましたが、これは初めから虫と植物との関わりを研究することを意図されていたのでしょうか?
村田さん:食草園が作られたのは、今、名誉館長の中村桂先生が館長だった2003年で、1993年の設立時にはありませんでした。けれども、身近な小さな虫たち、オサムシやナナフシなどを扱いながら現代の生物学として魅力的な研究をやろうというコンセプトは設立以来のものです。映画に出てくる、蝶と食草の関係から進化を探る研究は2000年頃から始まりました。その研究と、来館者にとっての身近な自然とを橋渡しする生態展示として「食草園」があります。当時、世の中に昆虫館や植物園はあるけれど、昆虫と植物の関わりに注目した食草園は生命誌研究館だけよ。というのが中村先生の自慢でもありました。
B・Cさん:中国出身で民際の学生です。今日はとてもおもしろかったです。ありがとうございます。
S・Cさん:留学生です。とてもおもしろかったです。このようなチャンスをいただいてうれしいです。またチャンスがあれば来たいです。
C・Mさん:孫といっしょに参加しました。日本人の心がこの研究の中につまっていると思います。質問ですが、ソマチットとウイルスやバクテリアとの関係はどうなのでしょう?
村田さん:ソマチット?
C・Mさん:赤血球の中にいて、人間に生きる力をつけて、意思を持っているそうです。死んだ人の中にはいないそうです。進化を信じる人にとっては、フリーエネルギーをとって生きていけるのだそうです。
村田さん:ソマチットについて私はわかりませんが、例えば、我々の体内に共生している微生物は、体重の何割か、かなりの重量を占めます。ヒトの体をつくっている細胞は37兆個ほどあるようですが、生きていくには、自分の細胞だけではなく、共生菌の働きも借りているわけです。その詳細は、現代の科学でもわかっているとは言えません。科学で何かがわかると、同時に、その周囲に、こんなにもわからない事があるということに気付かされます。自然界は、現代の科学でもわからないことに満ちていまあす。私たちは、私たちが知り得ない自然の恩恵に浴して生きているのだという謙虚さが必要で、その事実認識は、能楽の生まれた時代も、現代もかわらないものだと思います。
C・Mさん:この映画を国際化して、日本の自然を知ってもらったらどうでしょう。
H・Mさん(小5):小3の時にアゲハ蝶とモンシロチョウのちがいを見つけました。
四方さん:ひまわりの指導者です。教員を長くしていました。学校時代に小学校の理科で「モンシロチョウを育てよう」というのがあり、青虫からチョウチョに羽化して飛んで行ったのを観察しました。今振り返ると夜の間にまどを開けたら、「さようなら」と言えたかもしれないと思います。
D・Sさん:安詳小4年生です。知らなかったこともたくさんあって知れてよかったです。二階でさなぎを飼っていて成虫になるのが楽しみです。
N・Kさん:ひまわりの指導者です。ナナフシを見て永田和宏さんの短歌を思い出していたら、その歌も出て来てびっくりしました。科学もそうですが、歴史も音楽も自分も横のつながりの中にいるのだと実感しました。
S・Tさん:亀岡市の新採用の職員で、文化国際課にいます。群馬県出身で大学は京都外国語大学です。小2の時には、オオムラサキの幼虫を飼っていました。勉強しながら、3、4年生の時には、モンシロチョウを育てました。8割はモンシロチョウにはならなかったのですが。
K・Yさん:ひまわり教室で読み聞かせ担当をしています。村田さんの前の講座も来ています。虫にも生きる意味があり、一生懸命生きていると教わりました。以前は芋虫などの気持ちはわからなかったのですが、映像を音楽を入れて見せていただいたりして、手のひらに乗った蜘蛛を、スマホで見てみると、害虫ではないようなので、そっと家の外に出してやったりしています。
K・Sさん:京都の西京区に住んでいて一期塾という塾を開いています。私は虫好きで、今日はとても興味深い内容でした。子どもは大体虫が好きなので、今度高槻の生命誌研究館に予約をして連れて行きたいと思います。
村田さん:研究館へのご来館は、事前に予約いただければガイドスタッフの案内もありますし、毎月、生きもの研究に触れるイベントも企画しています。事前申し込みが必要な催しもありますが、是非、ご来館ください。
F・Bさん:民際の学生です。環境に関心があります。昆虫についての話でしたが、人間についても考えさせられました。多くの人に見てほしいです。
R・Zさん:台湾出身の民際の学生です。はじめて葉を食べているチョウチョがかわいいなと思いました。
Y・Cさん:感動しました。他にも中国出身です。虫も人間も日常に会えますが、生命でつながっているので、もっと大事にしましょう。
藤田さん:みなさん、それぞれ特徴のある自己紹介をしていただき、ありがとうございます。私はずっと映像制作に関わっていました。蛍は光を発したり、クモもカイコも糸を吐いたりしますね。
村田さん:私たちヒトにはできないけれども、自ら「光る」とか、「糸をはく」ということを、うまくいかして生きている生きものはたくさんありますね、しかも、皆、必ずしも同じやり方であるとは限らず、それぞれの進化の道のりで獲得した自分なりのやり方で、そうした能力を実現しているというのがまた生きものの面白いところですね。
藤田さん:最近、リュウグウが、宇宙の小さな星から持ち帰った星のかけら(物質)にタンパク質の素であるアミノ酸が7種類も含まれていたという記事が話題になりました。NASAでは、そうしたフロンティアの研究も取り組んでいますが、日本はどうなんでしょう。
村田さん:宇宙を漂う隕石からアミノ酸が検出されたということは、これまで、地球でしか確認されていない生命体の存在の可能性が、あるいは、生命体とまでは行かなくとも、有機物の合成が、地球以外でもあり得るということになるわけで…、今日、映画をご覧いただきましたが、なんで私が映画をつくっているかというと、それは、私が、映画に育てられたからであって、いろんな映画体験の影響をうけていますが、やっぱりスティーブン・スピルバーグの『未知との遭遇』”Close encounters of the third kind”という映画は、私がちょうど中学生になった頃の劇場公開で、今でもカット割を覚えているくらい(昔はビデオもなかったので、とにかく劇場へ何回も足を運んで観て、観たものを覚えました)かなり衝撃でした。”We are not alone”という予告編のキャッチコピー、ジョン・ウイリアムスの楽曲(音響)、さらに今年惜しまれつつ逝去されたビルモス・ジグモンドが光の造形で描き出すUFOの特殊撮影、そしてラストに流れる『ピノキオ』から「星に願いを」…”When you wish upon a star Your dreams came true” これからも、とっても大切なビジョンだと思います。
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時間が来たので、突然ですが、セッション終了
終了後のメールから
(C・Mさん)
「小さなものほど力があり価値がある」日本の古典芸能の素晴らしい音で締めくくり、空間が浄化された様に思いました。よく構成された映画でした。日本文化、見えないものを大切にする見えない力の偉大さを小さな虫たちに教えられました。生きとし生きるもの皆、一生懸命ベストを尽くして生きているのですね。
エゴを無くして、レースになったキャベツの葉を見て、美しい芸術作品だと受け止め歓び、今在ることに感謝して生きる日が、私に来るのでしょうか。夢見ています。蝶になる日を。ありがとうございました。」
児嶋きよみ:このGlobal Sessionは、現在はオフィス・コン・ジュント(Office Com Junto)が企画運営をしていますが、始まりは亀岡市交流活動センターで1999年です。もう20年間を超えましたね。だいたい月に1回の割合で開催し、今回は352回目になります。2011年に退職後は、児嶋とみなさんと共に続けてきました。コーディネーターをしていただいた藤田宗次さんは、1999年の開始時からのメンバーです。民際日本語学校のみなさんといっしょに来ていただいた亀田博さんも大津市から、来ていただいていますが、ツアーガイドなので、いっしょにアメリカの姉妹都市にツアーで訪問したこともあり、このGSも開始数年後からずっと月に一回参加していただいています。藤田さんも亀田博さんも英語の話し手ですが。今日も、村田さん達が作成された映画をどこよりも真っ先に鑑賞させていただきました。みなさんは、いろいろなことを思われたと思いますので、児嶋までお送りください。